シルクロードの花吹雪 概要


東西交易の華やかな唐代
敦煌の壁画を描く老画匠父娘と
西域の人々との心温まる人間愛のドラマ
シルクロードの国々の
絢爛豪華な舞踊と音楽を華麗に再現。

ものがたり

(序幕) 幕が開くと、そこは盛唐の世。ヨーロッパとアジアを結ぶシルクロードの路上にある陽関の近く。 ペルシャの商人・伊努思が、思いがけなく画工の神筆張とその娘・英娘によって砂風から救われるところから、この物語りは始まる。しかし英娘はシルクロードを横行する盗賊によってさらわれてしまう。

(第1幕) 5年後、娘を捜し求めていた父は敦煌の街なかで娘に巡り合うが、すでに奴隷として売り渡されていた。 偶然通りかかったペルシアの商人・伊努思によって今度は逆に助けられ、父娘は一緒になれる。

(第2幕) 神筆張は敦煌の郊外にある莫高窟のなかで、優れた壁画を作り上げている画工で、今日も天女の像の構想を練っているが、まとまらず悩む。英娘は父のためにさまざまなポーズをとり、やがて琵琶を背にして典雅に舞う技楽天の壁画を完成する。しかし英娘に横恋慕する市令の魔手が延びてきたので、彼女はひとまず伊努思と共にペルシャへ向う。

(第3幕) 英娘が伊努思のやしきへ来てからすでに三年の歳月がたった。しかし英娘も親しかったペルシャの友とも別れる時が来た。唐朝が二十七ヵ国交誼を開くことになり、伊努思がペルシャの通商使節として敦煌に行くことになったからだ。

(第4幕) その頃、敦煌に残っていた神筆張は数年来、市令によってつらい囚人生活を強いられていた。そんな時、河西節度使とその夫人に敦煌壁画の技量を認められた神筆張は、その罪を解かれ褒美に“官制の筆”まで拝受する。

(第5幕) 数ヵ月後の陽関の外。神筆張は西の空を眺めながら娘の英娘に思いを馳せている。後ろから声がするので草むらへ身を隠すと、そこへ市令が普段着で登場。ペルシャの隊商と共に英娘が帰ってくることを知った彼は、仲間を集めて襲おうとしているのだ。暗闇で突然襲われた伊努思一行の隊商は荷物やペルシャ国王の親書が隠されてある琵琶を盗まれてしまうが、神筆張の命を張った応援で、伊努思は危うく命を助かる。警報を聞いて兵士が駆けつけ、賊は逃げる。伊努思、英娘らにみとられるなか、神筆張は静かに息を引き取る。

(第6幕) 華やかな盛唐を表わす景色のなか、二十七ヵ国の交誼会が盛大に開かれている。河西節度使夫妻が各国の商使と共に会場に入ると、遠来の賓客を歓迎するために羽衣の華麗な舞が披露される。客たちも次々に踊って返礼とする。節度使へ送られる各地の珍宝の数々。そのなかでも市令が差し出した宝石をちりばめた琵琶はひときわ光っている。それは伊努思から奪ったものだ。節度使の喜びを見て、ひとりほくそえむ市令――。その時、舞踊手に変装していた伊努思、英娘が眼前に現われ、その悪事の数々を暴いてしまう。市令とその一味は捕らえられ、節度使は二人をやさしくいたわる。

(終幕) 天女が吉兆の花吹雪を散らすなか、節度使に見送られながら各国の商使が帰っていく。伊努思も去っていく。それを見送る英娘はいつまでもラクダ隊のシルエットと万里に続く果てしないシルクロードを見つめ続ける。